"" 私たちのプロジェクト、そして私たちが信じること
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冒頭でも述べたようにCIPプロジェクトは,様々な形態の普通幼稚園/保育園における最重度の障害をもつ子どものインクルージョン、という方向でその研究が進んできた。そしてその中で特に焦点が置かれてきたことは、インクルージョンのプログラムを計画し、更に実際にそれを実施すること、そしてその実際の経験の中からインクルージョンの成功を握る重要なポイントを探り出すこと、並びにそういった情報の記録、というような点であった。インクルージョンプログラムを実際に実施するということは,以下のような側面を含んでいる――1)計画を実行にうつす,2)家族と職員の準備をサポートし、また継続した支援を提供する,3)子どもと家族がもつ個々のニーズに応える,4)「社会的」かつ「教育的」なインクルージョンを促進するためのサポートを随時提供する。以下この節では,CIPプロジェクトの概要について、詳しく述べることにする。

共通の価値観から発したプロジェクト方法論
サークル・オブ・インクルージョン(CIP)プロジェクトの誕生


共通の価値観から発したプロジェクト方法論


CIPプロジェクトをすすめていく上で用いた方法は,子ども達が日常生活している場所(例えば,家庭,幼稚園や保育園)で行われる日常的な活動の中に、子どものニーズに合った指導と療育サービスを組み込んでいく、という自然主義的方法に基づいている (Bailey & McWilliam,1990; Bricker & Cripe,1992; Guess et al.,1978; Kaiser, Hendrickson & Albert, 1991; Noonan & McCormick,1993)。加えて、どのようにして、子どもとその家族にとって意味のあるインクルージョンが実現されていったか、そのプロセスにも注意を向けてきた。例えば、子ども同士のポジティブな相互交渉(友情)や家族と職員の間の生産的関係を促すようなサポートの方法や要因が探求され、検討された。プロジェクトが開始されたその初期には、プロジェクトの基盤を形成する私たちの信念/価値観が「7つの価値基準」としてまとめられ、その後のCIPプロジェクトの手順と活動を導くことになった。(表1参照)

 

表1 サークルオブインクルージョンプロジェクト「7つの価値基準」
第1の価値
私たちは,障害をもつ子どもが、家族,近所,地域社会の中で居場所を得て,日常生活の普通の流れを経験し障害を持たない子どもたちとの友達関係を経験する前に、まずは「正常に近付けられ」なければならないという考え(障害を持っているが故に何かに参加できない、つまり何かに参加するために満たさなければならない基準として「正常」であることを掲げるような考え方)を断固拒否する。特に私たちは、重い障害をもった幼児とその家族が、障害をもたない子ども達とその家族が通えるような地域にある質の高い幼稚園や保育園の中で、インクルージョンの機会をもてるようになることに大きな関心を抱いている。
第2の価値
私たちは、障害をもたない子ども達が、障害を持つお友だちと直接関わって友だち関係を築き上げる機会を持てるべきであると考える。それは、子どもたちがその幼児期に、多元的社会に生き一人一人の違いを受容することを学ぶことの大切さを認識しているからである。私たちは,幼児期こそが、子ども達が「障害」ということを知るための、絶好かつ重要な準備期間であること,また障害を持つ友達と互いに助け合い共に生活をすることで彼らの人生が豊かなものになることを強く信じている。
第3の価値
私たちは,インクルージョンが成功して長く維持されるためには、そのインクルージョンプログラムの実施が、関わる全ての人ーー家族、障害児教育スタッフ、そして幼稚園/保育園のスタッフーーの積極的介入、インプット、そして継続的な協力体制に基づく努力を反映したものであるべきであると信じている。
第4の価値
私たちは,注意深い観察とそれに基づく個別的なニーズにあった対応を提供されるに値する一人一人の人間として子供を捉え、それぞれの子供達独自のその子らしさと尊厳に対して深い敬意を抱いている。私たちは,子供に対する上でネガティブな手続きを用いることに反対であり,逆に、子どもの好みを認めてあげること,そして子供の意志決定力,自己意識,および個としての自立性の発達を促していくことこそが重要であると信じている。
第5の価値
私たちは,インクルージョンプログラムを組み立てていく際に,質の高い幼稚園/保育園などでみられるような発達的に適切な活動と教材を用いた優れた幼児教育アプローチ法を参考にしてうまく活用していくべきであると信じている。また、子供の教育に関わる教育目標と活動内容は、家族を第一の意志決定者として位置づけた上で、家族がもつニーズ、優先事項、方針等を基に、チームによる共同作業を通して計画/決定されるべきである。子どもが、持っている障害のためにクラスでの活動に100%参加できない場合,可能な限り子供の参加が最大なものとなるように「部分的な参加の原則」をうまく活用するべきである。
第6の価値
私たちは,「自然な割合」という考えを受け入れ,「現実的人口分布」に大体見合うような割合いで障害を持った幼児のインクルージョンを実施していくのが一番適切であると信じている。
第7の価値
私たちの時間とエネルギーは、インクルージョンを目指した努力が最も良い形で実現されていくために必要であると考えられる要因等を明らかにすることに費やされるべきである。


出典:Thompson, B. Wegner, J., Wickhan, D., Shanks, P., Reinertson, B., & Ault, M. (1991). An investigation of the transition and integration of preschoolers with severe and profound multiple disabilities into a Montessori community preschool program: Program history, features, and research activities in progress, Circle of Inclusion Project. Kansas Early Childhood Research Institute on Transition, Project 2.2, working Paper No. 1. Lawrence, KS: Schiefelbusch Life Span Institute, University of Kansas.

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サークル、オブ、インクル−ジョン(CIP)プロジェクトの誕生


1992年までに20人の障害をもつ子どもと2つの障害児対象の幼稚園、および4つの普通幼稚園/保育園がCIPプロジェクトに参加した。それら第一期参加者である20人の子どもたちについて、インクルージョンを実施する幼稚園/保育園に入園した時点での一人一人の大体の状況を表2にまとめた。子どもたちは3歳から5歳の間に入園しており、また20人全ての子ども達が入園の時点で既に明らかな障害状況を呈していたことが、表2に示された診断名,医学的状況及び/あるいは,発達検査による発達レベルからうかがえる。


1986年にダーナというたった1人の子どもから始まった極めて私的なできごとが,1992年の秋には2つの公立学校管区をも巻き込んだサービス提供システムとして発展していった。幼児期障害児教育サービス・システム再構築のために州の補助金を申請すべく2通の書類が提出され、その結果2つのプロジェクトが、「カンザス州教育委員会VI−B特別プロジェクト州基金」を通した補助金を得ることができた。そしてその財政的援助を受け、幼児期障害児教育サービス提供方法の新たな選択肢として、普通幼稚園/保育園における障害をもった子どものインクルージョンがカンザス州の2つの学校管区において実施されることとなったのである。カンザス州ローレンスではプロジェクトLIM(ローレンス・幼児期インクルージョン・モデル)が、そしてカンザス州カンザスシティーではプロジェクトWIN(ワイアンドット協力インクルージョン・ネットワーク)が,それぞれCIPプロジェクトの一貫としてインクルージョンモデルの実行および更なる研究に貢献した。各プロジェクトの概要はそれぞれ表3に述べられているとおりである。

CIPプロジェクトのモデルは、合衆国教育局障害児教育課の2つの訓練事業を通してさらに実践/拡張され情報の普及が努められている。そのうちの一つの事業では,CIPプロジェクトのモデルを、重い障害をもった子供と自閉症をもつ子供を対象に小学校におけるインクルージョンに応用する、という方向の研究である。そして他の一つでは,最重度の障害をもつ子どもたちのニーズに応じることができるような幼稚園/保育園でのインクルージョンプログラムを開始/実施するための、地域における人材の養成、という方向性に拡大されてきている。
1994年度の終わりまでに,地域の中の10の幼稚園/保育園(2つのヘッドスタートプログラムを含む)の23の教室で働く幼児教育教師および保母,10の就学前児用キンダーガーテン/小学校1学年/小学校2学年でそれぞれ働く教師、および2つの地域(ローレンスとカンザスシティー)の幼児期障害児教育プログラムの職員が、重い障害をもつ子どものインクルージョンを実施するためのトレーニングを受けた(Thompson & Wegner, 1993)。そしてその時点で,600人以上の健常児と35人の重い障害をもつ子どもが、CIPモデルに基づいたインクルーシブな教室のメンバーとして本プロジェクトに参加した。

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表2 インクルーシブな地域の幼稚園/保育園に入園した時点におけるプロジェクトに参加した子ども達の状況

子どものイニシャル / 入園日 / 月齢 / 性別 / 診断名 / 入園時発達月齢a(認知)(社会)(言語)(運動)


DD ・86/10/6 ・39・女・盲,聾,脳性麻痺・(0-6b) (6-18) (0) (g.0-6/f.0-6)
CS・88/2/1・41・男・脳性麻痺,ミクロ脳炎・(1-6) (8-15) (e.3-8/r.3-9) (g.2-5/f.1-4)
MA・88/2/1・56・男・盲,聾・(3-8) (6-9) (e.4-6/r.6-7) (g.5-6/f.5-9)
JF ・89/2/8・39・男・脳性麻痺・(3-6) (6-7) (e.6-7/r.10) (g.3-6/f.3)
CA・89/2/8・35・男・脳性麻痺・(6-9) (9-15) (e.4-6/r.8-10) (g.6/f.3-6)
GM ・89/4/3・46・男・ダウン症・(22-27) (28-30) (e.28/r.28) (g.24/f.26)
MA・89/4/3・51・女・ダウン症・(36-48) (36-39) (e.34/r.32-37) (g.26/f.24)
SD・89/9/28・52・女・脳性麻痺,視覚障害・(11-12) (11-18) (e.8-9/r.8-10) (g.6-15/f.12-15)
SB・90/9/10・60・女・脳性麻痺小頭症・(24-36) (24-36) (e.19/r.36) (g.18-21/f.6-15)
SW・90/9/10・56・女・ダウン症・(30-42) (32-34) (e.19/r.8-30) (g.18-21/f.28)
LB・91/4/18・65・女・脳性麻痺・(12-24) (10-30) (18-24) (g.12/f.12-15)
NA・91/9/3・52・男・言葉の遅れ,聴覚障害・(18-24) (16-24) (e.4-12/r.3-18) (g.12-24/f.12-21)
LW・92/9/16・45・女・脳性麻痺,視覚障害・(6-9) (3-6) (e.3-24/r.3-18) (g.12-24/f.12-21)
MG・91/9/7・60・男・ダウン症・(27-32) (25-36) (e.18-21/r.25) (g.18-41/f.15-35-)
MB・91/11/27・62・男・6トリソミー・(9-18) (6-18) (e.6-9/r.3-6) (g.4-9/f.4-7)
BS・91/12/9・48・男・脳性麻痺・(0-9) (0-9) (e.0-9/r.0-9) (g.0-6/f.0-9)
DW・91/12/11・54・男・髄膜炎,水頭症・(24 測定不能) (e.28/r.27) (g.19-24/f.18-27)
RH・92/1/1・38・男・発達遅滞・(18-24) (18-24) (e.16-18/r.18-24) (g.12/f.18-20)
CB・92/2/4・64・女・デモルシエ症候群,脳性麻痺・(6-9) (6-9) (7-8) (g.8-9/f.8-9)
TM・92/2/17・46・女・脳性麻痺・(1-15) (0-6) (e.4-18/r.4-13) (g.3-9//f.3-9)



Thompson, Wickham, & Wegner(1991)より転載
註:e =表出言語の得点;r =理解言語の得点;g=粗大運動の得点;f=微細運動の得点
a = 障害児教育専門家チームにより測定された発達評価得点
b =下位得点の月齢幅

 

表3 LIM及びWINプログラムの概要


カンザス州ローレンス・モデル(LIMプロジェクト,ローレンス幼児インクルージョン・モデル)は,地域の中の5つの幼稚園/保育園との間で交わされた合意を通してインクルージョンサービスを拡大し,あらゆる程度の遅れと障害(軽度から重度/最重度まで)をもった子どもに対するサービスを提供するまでにいたった。このモデルの中でインクルージョンを実施するためにとられたアプローチ法は,以下の2点を含んでいる。1)障害をもつ子どもの受け入れ枠を設けた2つの幼稚園/保育園における、幼児期障害児教育専門家の雇用 2)ある1つのヘッドスタートプログラム(*主に低所得者家庭からの子供のための教育プログラム)と、他の2つの幼稚園/保育園における、高頻度な巡回訪問による幼児期障害児教育サービスの提供。


カンザスシティー,カンザス・モデル(WINプロジェクト,Wyandotte Cooperative Inclusion Network)は,重度/最重度障害をもつ子どもや自閉症をもつ子どもの参加により展開した。本プロジェクトに参加する前までは、カンザス大学医療センター内の障害をもつ子ども対象のクラスでサービスを受けてきた子どもたちであったが,プロジェクト参加に伴い、以下のようなところに設置されたインクル−シブな教室へと移った。1)都市部に住んでいる家族のニーズを満たすために複数の機関が関わって設置された地域サービスセンターの中,2)私立の幼稚園/保育園,3)ヘッドスタートプログラム。

 

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